チーズケーキの値段 ~あのう、チーズケーキはひとつ何円でしょうか~

ケーキ屋のショーケースの画像

表のガラスドアを開けて入ってきたのは、五、六歳ぐらいの女の子でした。必死の面持ちの彼女はどうやらチーズケーキが欲しいようで、ガマ口の中のお金を数え始めるのですが…。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐< 以下、本文です。>‐‐‐‐‐‐‐‐‐

私が財布から紙幣を出していると、表のガラスドアが開いて、五、六歳くらいの 女の子が入ってきた。

顔を赤くし、必死の面持ちで、

「あのう、すいません」

と言った。私の相手をしていた女性がはい、と言って女の子の方に向き直ると 彼女は、

「あのう、チーズケーキはひとつ何円でしょうか」

と丁寧な口調で尋ねた。店員は女の子の必死の気配がおかしかったのか、

「四百三十円です」

と笑いながら応えた。

女の子は漫画のついた自分のガマ口を開け、二百円、三百円・・・、 と声を出してお金を勘定していたが、

「ああ、ないー」

と悲しそうな声を出した。そして、

「どうもありがとうございましたー」

と泣きそうな顔で言うと、ガマ口も閉めず一礼してガラスドアの方へ向かって駆け出した。

すると彼女にとっては厄日だったか、ドアの前で人と衝突し、ガマ口からお金をばら撒いてしまった。

子供にぶつかるとはなんという不注意な人間だろうと思って衝突相手を見ると、私の友人だった。

御手洗もさすがに悪いと思ったらしく、急いで屈み込むと、

「ああ、ごめんね」

と言いながら、女の子と一緒にお金を拾い集め出した。

「二百円、三百円、四百円・・・・・、あれえ、ほら、四百八十円あるじゃないか、チーズケーキが買えるよ」

と私の友人は、拾ったコインを女の子の小さな手に渡しながら言った。

「あれえ、本当だー」

と女の子は言った。

「駄目だよ、きちんと数えないと」

と、御手洗は笑いながら言った。女の子は嬉しそうにコインを握りしめ、私の横に戻ってきた。

どうやら女の子はチーズケーキを買うことができるようだった。

笑顔の似合う娘 ~涙と鼻水を流して笑った。我ながら情けない…~
娘さんが嫁に行きました。「目に入れても痛くない」と断言できるほど愛おしい娘さんでした。お父さんはその時、一体どんな気持ち...
ひらがなの手紙 ~当時ひらがなを覚えたての私が読めるように~
お母さんは彼女がまだ幼稚園のときに他界。そして残していく愛娘に一通の短い手紙を残しました。まだ幼い娘に読めるようにと平仮...
上田勝恵一等海佐の粋な対応 ~対応した「かしま」艦長はこう答えた~
2000年7月4日。20世紀最後のアメリカ独立記念日を祝う式典に参加した自衛艦「かしま」に、英国の豪華客船「クイーンエリ...
バス停の恩人 ~うちの子お喋りが出来ないんだ。だから答えれなくてごめんね~
お父さんには悩みがありました。それは、もうすぐ三歳になる息子が上手く言葉をしゃべれないことです。ある日お父さんは、その悩...
野球ごめんね ~父が亡くなり、母は再婚もせずに俺を育ててくれた~
彼が幼い頃に父親は他界しました。それ以来、母は女手ひとつで彼を育ててくれました。お金が無いので暮らしは決して楽ではありま...